秋も深まり、木々の葉が紅く染まりはじめる頃。取材班(1人)に、とある情報筋から極秘の情報が寄せられた。
この季節、摩耶山の紅葉を楽しむために絶好なロケーションがあるという。その名は、シェール槍_。
報せを受けた取材班(1人)は、さっそく情報の真偽を確かめるべく「シェール槍」へと向かった。
シェール槍は、穂高湖のちかくに位置しているという。
ひっかかるのはもちろん、その名称だ。まさか湖のほとりにシェールさんの槍が刺さっているとでもいうのか。
いやまて、そもそもシェールさんとは一体何者なのか・・・
おっとしまった、危うく情報に踊らされてしまうところだった。とにかく行って確かめてみるしかない。話はそれからだ。
そんな想いを逡巡(しゅんじゅん)させながら、我々取材班(1人)は穂高湖への入口に到着した。
すこし歩くと、さっそく運命の分かれ道がお出ましだ。しかも二つ続く。どっちに行けばシェール槍に近づける、右か、左か_
真ん中を進んでみましょう。
そのうち「穂高橋」に差し掛かった。右手には治水設備が大きく口を開ける。いよいよあのシェール槍に近づいてきた証とでもいうのだろうか_
おっと左にも広めの道があるぞ。ちょっとのぞいてみよう…
綺麗だ…。おもわず顔がニヤけてしまうほど、心地良い秋の風景がそこには広がっていた。
ここのベンチに腰掛けて、陽が落ちきるまで大切な人と大切なひとときを・・・
などという想像も取材班(ひとり)には広げる余地がなく、ひきつづきシェール槍を目指し右手へ。
すると…
あった、「シェール槍」の標識が!!
「あと10分」と示された矢印の先は・・・んん?
岩崖なのですが・・・。
いや、ここまで来たのだ、挑戦しなければ苦労してきた甲斐がない!!
というわけで、ガッシガッシ…
ガッシガッシ…
ガッsさすがは秘密のスポット。切り立った岩壁が行く手を阻む。このままではせっかく新調した登山靴が台無しになって_
着いた。
「あと10分」の標識に違わず、ロッククライミング気分を味わいながらすぐに頂上に到達できた。足下への注意は必要だが、慎重に進めば登ることができる。これがシェール槍の頂。そしてぐるりと見渡せる長大パノラマは_
真っ赤っか♡
…というより、緑の針葉樹林と色づいた広葉樹林とがモザイク状に山々を彩っている。
しばし見とれ、おもわず足下がおろそかになってしまった。
すばらしい。これはすばらしいロケーションだ。
寄せられた情報は本当だったのだ。よかった。
「シェール槍」という名前の由来だが、その前を通るシェール道は、明治時代に神戸にやってきたドイツ人のシェール氏が愛した道として名づけられている。
そこから伸びた槍のような岩山ということで、「シェール槍」となったのではないだろうか。
シェールさんは実在したのだ。
このシェール槍が紅葉スポットとしても、また四季折々の山の表情をたのしむためにも格好の場所であることは確かだった。
日が傾きはじめたことを感じながら、私はふたたび登頂することを誓って岩肌をくだりはじめた。
なおこの季節、穂高湖周辺ではシェール槍方面を中心に秋の摩耶山の紅葉を存分にたのしめる。
シェール槍への入り口は穂高湖周遊路のうえにあるので、行き帰りには穂高湖からの風景もオススメだ。
穂高湖・シェール槍へは…
掬星台より六甲山牧場方面へ道なりに進むと、15分ほどで穂高湖への入り口に到着します。
表示板に従い進んで穂高橋までまっすぐ、そこから右手に進めばシェール槍への入り口があります。
またシェール槍への入り口を過ぎて進むと穂高湖の周遊路につながります。
周遊路は400メートルほどですが、日没時間が早まっているため、時間に余裕を持ってお越しください。